共同研究費が安すぎませんか
先生と共同研究の話をしていると、何だか安すぎるのではないか、と感じることも少なくありません。
ある先生は共同研究費を100万円と設定していました。その理由を問うと「前任のコーディネーターが100万円くらいではないか」と言ったからだそうで、それ以降、どの企業であっても、共同研究の内容に関わらず一律100万円でやってきた、といいます。私の見立てでは500万円前後が適正と思えました。
また、ある先生は基本を500万円と設定していました。その理由を問うと、ご自身が学生時代に先生が500万円だったので、それを踏襲しているといいます。こちらも私の見立てでは1,000万円前後が適正と思えました。
共同研究の適正価格とは何でしょうか。結局は相対で決まるので絶対的な価格設定などできないと思います。それでも大学の研究には価値があり、社会実装という形で世に出ていくためには、適正な対価も必要ではないでしょうか。
大学ならタダで使えると考えているような企業も、まだまだあります。
企業が悪者のように聞こえるかもしれませんが、適正な価格設定ができない先生やコーディネーター、URAといった大学側には、もっと大きな課題があります。誰も気にしていない。件数や金額の統計を取って毎年比較するだけです。共同研究の件数や金額向上のため、何か具体的なアクションプランがありますか。
共同研究費の設定支援
ある先生は大手メーカーとの共同研究費の設定の仕方で相談に来られました。その分野では第一人者の先生ですが、私の相談は技術の話ではなく、価格設定の話です。現状を聞くと、実験に必要な購入設備や消耗品しか計上していなかったので先生はお金に追われていたのでした。共同研究の中身を聞きながら、一緒に見積りのタタキ台を作ったところ300万円だったものが600万円近くになりました。一口600万円なのではなく、先生もその理由を説明できるので、しっかり交渉してみたいと満足頂いています。
また、ある先生は新年度に向けた共同研究契約に向けて、大手メーカーから〇〇万円以上は決裁が必要なので△△万円でお願いされているが、どうすべきかと相談がありました。必要な共同研究なら決裁に諮って頂けば良いだけです。なぜ、先方の理由で先生が、大学が、安売りしなければならないのでしょうか。
忙殺される売れっ子先生
どの大学にも企業から人気の研究をしている先生がいますが、多忙です。多忙にも色々ありますが、共同研究が多忙に拍車をかけているケースもあります。寝る時間もないとの相談だったので、共同研究の単価を上げて件数を減らすようにアドバイスをしました。寝る時間もないのに、なぜ安い共同研究費で働くのでしょうか。誰かがサポートしないと売れっ子の先生が倒れてしまいます。
中には数十万円の共同研究を10本20本と抱えている先生もいます。一概に高いから良い、安いから悪いとは言えませんが、先生が多忙を極めている状態であることは、良い研究を行うためにも改善すべきと思います。共同研究の契約書は同じでも、締結に向かう過程、金額や内容、肝心のそれらの交渉内容までは共有されておらず、担当URA等の属人性に委ねられている大学も少なくないようです。非常に勿体ないとしか言いようがありません。
研究内容に見合う対価は頂くべき
日本一、世界一の研究には相応の付加価値があるはずです。企業のように大学や研究室で利益を上げよ、と言っているのではありません。付加価値に見合う対価は頂くべきです。研究を行うためには、研究費の獲得が不可欠なのです。
例えば大手企業からしっかり取れているのであれば、中小企業との共同研究には安価で、無料で行う、というような選択肢もアリだと思います。そうした社会貢献もできれば素晴らしいと思います。
もちろん繁閑は何にでもあります。共同研究が取れなくなった時には、単価を下げるなり、研究の方向をピボットするなりの工夫を行うことも必要です。
体を壊す前に、共同研究のお困りごともご連絡ください。